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岡山・3人の備前焼作家ギャラリー「Kai」が1周年 限定セット「三結義」も

(左から)「BIZENギャラリーKai」の森大雅さん、藤田祥さん、馬場隆志さん

(左から)「BIZENギャラリーKai」の森大雅さん、藤田祥さん、馬場隆志さん

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 「BIZENギャラリーKai」(備前市伊部)が現在、1周年記念展を開催している。

備前三結義セット(ぐい呑み)

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 備前焼作家の森大雅さん、藤田祥さん、馬場隆志さんが、昨年7月8日にオープンした。血縁ない作家が集まりギャラリーを持つことは珍しいという。

 馬場さんは、備前焼作家の父を持ち、東京芸術大学彫刻家を卒業した。馬場さんのことを藤田さんは「スタイリッシュな造形と曲線や直線、西洋の美を感じさせる作品を制作する」、森さんは「イメージがクリアにあるように見える。しっかりした自分のベクトルを持った潔い作品を見せてくれる」と話す。馬場さん本人は「使えるオブジェを作っている。見て楽しい、使って楽しいを大切にしている」と話す。

 藤田さんは、和歌山市に生まれ備前の土に魅了され岡山に移住した。藤田さんのことを馬場さんは「超マニアック。土の美しさを的確に表現する作家」、森さんは「わらを巻いて焼くことでたすきのように掛かる模様『火襷(ひだすき)』のたすきではない部分の美しさを追求する人。私にはない土に対する目線が鋭い」と話す。藤田さん本人は「土の質感を大切にしている」と話す。

 森さんは、備前窯元六姓に生まれ、祖父の森風来の窯を継ぐ。森さんのことを藤田さんは「旅する陶芸家。おおらかな人柄が作品にも表れている」、馬場さんは「手が赴くままに作品が出来上がっていく。土と対話し土がどうなりたいかをくみ取って作品にしていく人」と話す。森さん本人は「新しいところに行くことが好き。自分の意識していない特別でなかったことを形にしていく」と話す。

 2017(平成29)年、備前焼陶友会青年部で台湾へ研修旅行に行った時、3人は観光をせず台湾のギャラリーを巡る。それまで交流のなかった3人が初めて行動を共にすることになった。昨年2月、台湾でのアートフェア中だった3人に、現在のギャラリーの建物が空き家になったと連絡が藤田さん入り、その場でオープンすることが決まったという。

 ギャラリー名の「Kai」は、講堂が日本遺産に指定されている旧閑谷学校のシンボルとなっている櫂(かい)の木のように大きな存在になれるように、古代遺跡などからも発掘される船をこぐ現代のオールを「かい」と呼び、世界へ向けてこぎ出せる場所に、3人でギャラリーをすることで新しい出会い「会(かい)」が生まれるようにと3つの意味を持たせた。

 1周年記念展では、同展限定の「備前三結義セット」を用意している。3つのぐいのみセット(2万6,400円)と3つの湯飲みセット(1万6,500円)を各30セット販売する。三国志演義などで登場する劉備(りゅうび)、関羽、張飛の3人が生死を共にすることを誓った「桃園結義」に思いを重ね名付けた。

 新型コロナウイルスに関わる医療従事者への義援金を送るチャリティーコーナーも設ける。コーナー内のマグカップ、しょうゆ皿、茶わんなど日常使いしやすいものを提供し、売り上げの半分を日本医師会へ送る。森さんは「われわれも展示会やイベントがなくなりギャラリーを閉めている時期もあったが、もっと大変な人、支えてくれている人に感謝の気持ちを送りたい」と話す。

 ギャラリー内では特別展示も行う。東京芸術大学彫刻家出身の馬場さんは、学生時代に制作した作品を展示する。備前焼は釉薬(ゆうやく)を使わないことが特徴の一つだが、藤田さんはあえて釉薬を使う新作を並べる。森さんは直径90センチ以上ある倒れた瓶(かめ)を配置する。森さんは「窯から出す寸前まで立っていた瓶が、ありえない形に倒れていた。偶然にできた造形や色を気に入って捨てられなかった」と話す。

 来店者には、「暮らしと珈琲(コーヒー)」(岡山市中区祇園)が作った備前焼で飲むブレンドコーヒー「備前焼で完成する珈琲」を限定で配布している。インドネシア、グアテマラ、ブラジルなどの豆をブレンドし、釉薬を使わない備前焼が水をまろやかにするといわれる効果を考慮して作ったという。

 森さんは「性格も作風も考え方も違う3人が、一緒にギャラリーをやることですごく刺激がある。それぞれにチャレンジするものは違うが、自分の気持ちを鼓舞してくれる。相互に作品を批評し合えることは、ありがたい。新型コロナウイルスの状況を見て、今後は3人でフランスやイタリアなど海外での展覧会も企画したい」と話す。

 営業時間は10時~16時。ギャラリーと同様に作品を購入できるウェブ展「結」も同時開催している。9月22日まで。

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