「きびちゅうおうのみんなのデパート安藤酒店」(吉備中央町湯山)が11月22日、オリジナルクラフトビール「ROSE」の販売を始めた。
安藤酒店は1872(明治5)年、酒造会社として創業。戦後から酒類販売店の営業を始め、近年は娘で音楽療法士・バイオリニストの安藤律子さんが「ギャラリー竹富」を運営していた。安藤さんは、築150年といわれる同店建物を使う人を募集していた。
岡山市北区笠山で酵素玄米専門店「MOJIRO(もじろう)」を経営していた時宗正幸さんが安藤酒店の使用者募集を知り、2020年3月に「きびちゅうおうのみんなのデパート安藤酒店」を安藤酒店でオープンした。店内では、塩こうじ漬け照り焼きチキン(650円)やサバの竜田揚げ(550円)などの酵素玄米ライスバーガー、季節のメニューを提供するほか、吉備中央町の特産品や地域で育てた野菜などの販売も行う。
安藤さんは、吉備中央町で育てた大麦でビールを造ることを計画。2015(平成27)年に、大麦のゲノム解析などを行う岡山大学の佐藤和広教授を通じ、吉備土手下麦酒醸造所(北区北方4)会長の永原敬さんと出会った。その後、安藤さんは体調を崩し、時宗さんが酵母探しを引き継いだ。
時宗さんは、安藤酒店の庭に咲いていたバラをはじめ、ユズ、イチジク、米など10種類のサンプルを鳥取大学農学部の児玉基一朗教授へ送り酵母の採取を依頼。酵母は数種類採取され、今回のビール製造にはバラから見つかったラカンセア酵母を使うことになった。
児玉教授によると、バラからこれまで採取されているサッカロマイセス酵母ではなく、ラカンセア酵母が採取できたのはまれなことという。「ラカンセア酵母はアルコールを作ると同時に乳酸を作るため爽やかな酸味を生む」とビールの仕込みを行った永原さん。
永原さんは「安藤さんの思いを引き継ぎ、ビールを完成できたことは本当にうれしい。いずれは吉備中央町産の麦でビールを造りたい」と意欲を見せる。
時宗さんは「昔から親しまれてきた安藤酒店からまたビールを販売できることがうれしい。さっぱりしたビールで、いろんな料理に合わせて飲める。吉備中央町に飲みに来てほしい」と呼び掛ける。
価格は330ミリリットル入り=660円。同店では現在、200リットル分・589本の限定販売を行っている。
営業時間は土曜・日曜・月曜・祝日=11時~18時。