岡山県とロサンゼルスを舞台にした短編映画「Korakuen」の制作が始まっている。
監督の安藤美亜さんは岡山県倉敷市出身。アメリカで俳優やプロデューサー、脚本家、詩人、作詞家として活動する。2006(平成18)年からロサンゼルスに住み、演出家・映画監督のロバート・アラン・アッカーマンさんに師事。主な出演作は、東日本大震災の被災者遺族を演じた映画「The Wind Phone(風の電話)」や主演作の近未来SF映画「Submittan(サブミッタン)」などがある。
安藤さんは俳優としてキャリアを重ねる中で、自分が伝えたいことを物語にしたいという気持ちが強くなっていったという。コロナ禍をきっかけに作詞や脚本などの制作業にシフトしていたところ、以前から交流があった脚本家・プロデューサーのアーロン・ウルフォークさんから誘われ、初監督を務めることになった。
テーマは、愛する人を失った悲しみから立ち上がる再生の物語。自閉症を抱える中年の日系アメリカ人男性のダニーが最愛の妻・京香を亡くし、京香の故郷である岡山を訪れるというストーリー。ストーリーのベースとなる部分に安藤さんのアイデアも加えられていった。「社会の中で、救いきれてない場所にいる人に光を当て、心の痛みに寄り添うように構成を深く掘り下げ、もっと世の中が優しくなる作品を作りたい。これをきっかけに何かに気付くような、社会問題に一石を投じる作品にしたい」と話す。
映画は現在制作中で、岡山での撮影は8月後半~9月を予定。タイトルの「岡山後楽園」のほか、岡山駅周辺、倉敷市、旧中山家住宅、高梁サービスエリアなどで撮影を行う。作品は18分~20分のショートムービーで、完成は来年1月ごろを予定している。完成後はプライベート上映会を行い、国内・海外映画祭へ出品。来年12月には劇場公開を目指すほか、ストリーミング配信も行う。
安藤さんは「海外に出てみて分かる岡山後楽園の美しさ。観光地として描くのではなく、主人公たちの思い出の場所として描いている。日本では、辛さや苦しさを打ち明けることを恥や弱さとして捉えられ、我慢を強いられるものになることが多い。身近な存在を失う経験をしたことから、愛する人を失う悲しみを表現したい。映画がきっかけで、心の痛みや悩みを打ち明けられたり、明るく柔らかな気持ちになれたりすれば」と話す。
クラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」で6月30日まで、製作費などの支援を募っている。