タイの雑貨店「iiddeeii(イーディー)」の販売会「タイと私のものがたり」が9月1日、「ぜろどーなつギャラリー」(岡山市北区富田町2)で始まった。
同店は、瀬戸内市出身でタイ在住の出井孝枝さん夫婦が2016(平成28)年に立ち上げた移動式の雑貨店。竹や水草で編んだかごや蒸籠(せいろう)、生地から織り上げたブランケット、スマホホルダーなど、タイの作り手に出井さんのアイデアを加えた雑貨約30種を販売する。
出井さんは、実習生として備前市で働いていた夫と出会い、2010(平成22)年にタイに移住。夫の出身地のイーサン(東北部)はカオニャ(もち米)やサトウキビしか作れないエリアで、現金収入は乏しく、首都バンコクや海外に出稼ぎに行く人が多い。現地を訪れた出井さんは当初、3年間の滞在予定だったが、村の人たちの貧しさに触れ、現地の人が作る日常的に使う織物や竹かごを、日本人などに売れるようにデザインやサイズなどを考案して販売することで、貧困から救えないかと考え始める。
出井さんは、雑貨が大好きなこと、バックパッカーとして世界中の商品を見てきたことから、「かわいいだけでなく使ってもらえるためのアイデアには自信があった」という。コロナ禍ではロックダウンしたバンコク市内の日本人の自宅を訪問し販売するホームマルシェを行い、1日3会場を回ることもあった。その後、ヒルトンホテルや百貨店が開催するマルシェに出店するなど、日本人だけでなくバンコクに滞在中の外国人に向けて販売してきた。
1日は、出井さんが各商品のストーリーを話しながら販売。以前、バンコクで商品を購入したことがある元駐在員の妻や出井さんの高校時代の同級生、雑貨好きの家族連れなど多くの人が訪れた。ミャンマーのモン族が手織りで刺しゅうを施したタペストリーなどはすぐに売り切れた。
出井さんは「昔の日本にもあったような手作りのものづくりが、タイにはまだ残っている。タイでも日本と同じように後継者不足で継承が危ぶまれている。ファストファッションに慣れてしまい、安くて均一な商品を使っては捨てるという循環ではなく、作り手が手間暇かけて作った商品を、適正価格で購入し、長く使うという循環を生んでほしい」と話す。
「山岳民族で元ストリートチルドレンだった人たちやシングルマザーの働き口として、フェアな価格で作ってもらい販売している。工程は全て手作業で行っている。それぞれの商品にあるストーリーを知ってもらい、手仕事の良さを感じ、使いやすい商品を手に取ってほしい」とも。
これまで日本での販売はほとんど行っておらず、今春に東京・浅草、岡山、高知でポップアップ出店した。今回は出井さんの出身地である岡山のみで販売する。10日には岡山市立山南公民館(東区邑久郷)で「おしゃべりサロントーク」と販売会を行う予定。
開催時間は10時~16時。今月3日まで。