
「柚木沙弥郎~永遠の今」が現在、岡山県立美術館(岡山市北区天神町)で開かれている。
同展は、「民藝(みんげい)はずっと僕の根っこにある」「ワクワクしなくちゃ、つまらない」「旅の歓び」「今日も明日は昨日になる」の4部で構成。同館が所蔵する版画「桃太郎の門出」、個人所有の「柚木沙弥郎の鳥獣戯画」など特別展示5点を含む約280点を展示する。開催は2008(平成20)年の特別展「柚木沙弥郎~わきあがる色と形」以来。
柚木沙弥郎さんは1922(大正11)年東京生まれ。祖父が日本画家、父が洋画家、東京帝国大学で美術史を学んでいたが、戦後、岡山県倉敷市玉島に疎開し、大原美術館に勤めることになる。大原美術館の創設者・大原孫三郎は、民藝運動の作家・柳宗悦らを支援していた。柚木さんは初代館長から染色家の芹沢銈介さんを知り、「型染めカレンダー」に強く引かれ、染色家を目指したという。
柚木さんは芹沢さんに学び、静岡県由比町の染物店に住み込み、染色を学んだ。倉敷に戻り初めて作った染色作品「紅型(びんがた)風型染布」を展示。この頃から2022年まで73年間、国画会展覧会(国展)に毎年出品している。女子美術大学で専任講師となり、注染という技法作品を展示。同大では後に学長となる。
大原美術館の2種のロゴ、岡山県民藝振興の展示会・案内状、倉敷レイヨンの社内誌「倉敷レイヨン制作月報」の表紙、高梁川流域連盟が刊行する雑誌「高梁川」の表紙、倉敷中央病院の小児科待合壁画「サーカス」の下絵なども展示。倉敷中央病院と倉敷民藝館の主催で3月2日に見学ツアーも行う。
このほか、大規模改修中の川口市立川口総合文化センターから、ホワイエに設置されているタペストリー「波動」を出品し展示。2017(平成29)年に泉美術館の特別展「いのちの旗印」のために制作された「こいのぼり」は3メートルを超える大きさ。当初は黒いコイだったが、被爆地・広島での開催だったため、炎の赤に変更したという作品。
同館主任学芸員の廣瀬就久さんは「民芸の染色家としてスタートしたが、大学の学長を経て、染色、絵本、版画、立体(人形)に至るまで、興味のあることを突き進み亡くなる前年まで作品を作り続けた。過去を否定しないとげとげしさのない人柄と作品の裏側には、戦争で亡くした友への申し訳なさを感じていた。また東日本大震災以降は人間が生きるとはどういうことかを考えた作品を多く残した。色と形の楽しさと幅広い作品のバイタリティーを感じてほしい」と話す。
3月22日には廣瀬さんによる美術館講座(14時~15時)も予定している。巡回展は、島根、静岡、東京に続く。
開催時間は9時~17時(2月22日・3月22日は19時まで)。月曜休館。入場料は、一般=1,300円、65歳以上=1,000円、大学生=500円、高校生以下無料。3月23日まで。