
備前市美術館(備前市伊部)が7月12日に開館した。
JR赤穂線の伊部駅の東隣にあった「備前市立備前焼ミュージアム」を建て替えて完成した同館。備前焼を中心とした現代陶芸に加え、国内に限らず、世界の現代美術、建築、デザインなど幅広い分野の展示や情報発信を行う目的で建設した。
同館は、「素の美」をテーマとした3階建ての建物。正面入り口はガラス張りで、エントランスホールでは黒御影石を使った大きな壁と、伊勢﨑淳さんによる高さ約7メートルの備前焼モニュメント「土と炎の記憶」が来場者を出迎える。5つの展示室と、ミュージアムショップやカフェ、屋上庭園、茶室も設け、建物の全体イメージは、作品を際立たせるためモノトーンを基調としている。
現在は、開館記念特別展「ピカソの陶芸-いろとかたちの冒険-」「備前の現代陶芸・至極の逸品」を同時開催している。「ピカソの陶芸-いろとかたちの冒険-」は、画家のパブロ・ピカソが1946年からフランス南東部のヴァロリスで作った陶芸作品を中心に38点を展示。備前市は、2023年に同市と姉妹都市協定を結んでおり、ピカソの陶芸作品を所蔵する「ヨックモックミュージアム」(港区)の協力を得て実現した。
「備前の現代陶芸・至極の逸品」は、金重陶陽(かねしげ・とうよう)をはじめとする重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品と、精鋭若手作家の作品など、前期・後期合わせて83点の備前焼作品を展示。各作家を代表する作品を並べ、緋襷(ひだすき)や胡麻(ごま)のかかった大皿やつぼをはじめ、赤く着彩した備前土に金属の棒を合わせた花のオブジェ、クラシックカーを模した細工物など、備前焼の伝統と、それらをベースにした新しい備前焼の表現を紹介する。
同館学芸員の田邊桃子さんは「現代陶芸として備前焼の可能性を広げた第一人者である伊勢﨑淳さんが自画像とも称する作品『風雪』は、今回の展示のメインとして注目してほしい作品。現在の備前焼界をけん引する気鋭の作家たちによる作品から、今の備前焼の魅力を感じてほしい。現存作家に関しては、作家本人が考えたキャプションの文面からも人柄が出ていて魅力的」と話す。
7月20日には、備前焼作家の隠﨑隆一さんと学芸員の田邊桃子さんによるギャラリートークを行うほか、26日には開館記念コンサート「フランスによせて」、8月2日には東京大学総合文化研究科准教授の松井裕美さんのよる講演会、9日には、ワークショップ・陶器タイルの絵付け体験「エディション・ピカソに挑戦してみよう」を開催する。
開館時間は9時~17時。月曜休館(月曜祝日の場合は翌日休館)。特別展前期(9月28日まで)の入館料は大人=1,000円、学生=500円、中学生以下無料、65歳以上の備前市外在住者=500円、65歳以上の備前在住者無料。特別展後期(10月11日~12月25日)の入館料は大人=500円、学生=300円、中学生以下無料、65歳以上の備前市外在住者=250円、65歳以上の備前在住者無料。