倉敷市船穂町にある松井農園ナチュラル(自然派)ワインを紹介するイベントが8月21日~23日、アートスペース「油亀」(岡山市北区出石町2)で開かれる。
松井農園は約1.3ヘクタールのブドウ農園。フランス料理のシェフだった松井一智(かずのり)さんは2010(平成22)年から2年間、同町の農業研修を受ける。2016(平成28)年にワイン醸造家の大岡弘武さんがフランスから岡山へ移住したタイミングでワイン造りを始める。現在は、食用のブドウも含め約4000キロを収穫。畑では除草剤や肥料を使っていない。2018(平成30)年、同ワインの生産を始め、昨年は300本を販売した。
フランスに料理の留学中、大岡さんと出会い、週5日をブドウ農場で作業したという。松井さんは「農場で汗をかき働いた後のご飯が格別においしかった。料理人として生きるだけでなく、農場で働くという選択肢がここでできた」と話す。
ナチュラルワイン「M」は、昨年8月下旬から収穫したマスカット・オブ・アレキサンドリア(80%)とマルサンヌ(20%)を丸ごとタンクに入れて約2週間、「マセラシオン・カルボニック」製法で造る。ボジョレ・ヌーボーなど赤ワインでよく使われる製法で、ブドウを破砕せず丸ごと使う。炭酸ガスがブドウを包み、香りを引き立てる製法といわれる。
松井さんは「白ワインでは使わない製法に挑戦した。香りは、ライチやパッションフルーツのような南国フルーツを感じさせる。口に含むとレモンやグレープフルーツのようなさっぱり感がある。少し下に残るとろみのような口当たりがあり、かんきつの皮のような渋さもあり複雑さも楽しめる。暑いこの時期にキンキンに冷やして飲んでもいいし、開栓して1日置いてナッツ感の増した状態も楽しい。昨年は余韻を楽しむワインだとすれば、今年は香りを楽しむワイン」と話す。
「マスカット・オブ・アレキサンドリアは130年の歴史がある。多くのブドウの原種でもあり、明治時代から温室栽培など多くの人の努力でここまで続いてきた。多くの品種が作られ衰退している側面もあるが、ワイン造りを通しておいしさを感じてもらい、歴史を引き継いでいきたい」とも。
瓶のラベルは、松井さんの娘を写した写真を加工して本人が制作した。「M」は、マスカット・オブ・アレキサンドリア、松井、娘の名前などの頭文字から名付けたという。
併せて、倉敷のガラス作家・白神典大さんが約20点のワイングラスを展示・販売。松井農園のマスカット・オブ・アレキサンドリアの枝を燃やした灰をガラスに溶かし込み、吹きガラスで作る。油亀は2015(平成27)年から、岡山県内のブドウ農家、桃農家から提供してもらった灰を全国の陶芸家やガラス作家に使って釉薬などにして使ってもらう「リハイクル」プロジェクトを企画している。
価格は3,500円。1日40本、計120本を先着順に販売。製造は800本を予定しており、県内の飲食店やワイン専門店でも扱う。
開催時間は13時~18時。