第16回岡山県新進美術家育成「I氏賞」選考作品展が1月16日から、岡山県天神山文化プラザ(岡山市北区天神町)で開かれている。
I氏賞は、1959(昭和34)年に稲盛和夫さんと共に京セラを創業し、後に社長を務める高梁市出身の伊藤謙介さんが岡山県のゆかりある若手美術家のための寄付金で、岡山県に設置された基金で2007(平成19)年から開催している。岡山出身でデビュー作の「エビチリ大好き」がカルティエ現代美術館のコレクションとなっている松井えり菜さん、ドイツで活動する画家の加藤竜さん、ベネチアビエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などに出展する写真家の下道基行さんなど多くのアーティストを輩出している。
今年は、県内外に約60人いる推薦委員から36人が推薦された。いずれも2023年4月時点で18歳以上40歳以下であり、岡山出身や岡山で学んでいたなど岡山県にゆかりのある人。ジャンルは彫刻、工芸などの立体作品と絵画・版画・写真・グラフィックデザイン・工芸などの平面作品。候補者は自ら、経歴や代表作品1~3点を選び書類を提出。書類審査により11人を選んだ。同展では、各候補者の代表作のうち1点を選考委員が選び展示する。
選考委員は、大原美術館・代表理事の高階秀爾さん、京都国立近代美術館・館長の福永治さん、京都市京セラ美術館・学芸員の吉中充代さん、鳥取県教育委員会事務局の尾﨑信一郎さん、岡山県立美術館・館長の守安收さんの5人。
選考作品は、以下の11作品。岡山出身の明石麻里子さんの化学繊維のオーガンジー生地を使った立体作品「心象Ⅰ」。岡山県生まれ京都出身の厚地朋子さんの性格やものの見方が空間に影響を与えていることを気付き描いた絵画「盆地的空間認識 #2」。小中高校生活を岡山で過ごした上田尚宏さんの、段ボールに同色として販売されるシルバーを塗った作品「Iridescent silver7478/870」。岡山県出身の沖田愛有美さんの絵画と工芸の間を制作するところから始まった「結露する森」「藪を行くもの(い)」「藪を行くもの(き)」。岡山県在住の酒井龍一さんの変わるもの・変わらないもの不明瞭でよく分からない世界を映し出す絵画作品「Fragment」。岡山県出身・在住の中桐聡美さんの瀬戸内海をモチーフに記憶の痕跡を描いた版画「foam」。岡山県出身の中塚文菜さんの広島平和記念公園内にある折り鶴を譲り受けつなぎ大きな一羽の鶴を作った「誰かの祈りを開いて閉じる」。岡山県出身の蓮岡匡浩さんの旅先で出合った自然を作為的な描写と偶然が作る表現を加えて制作した「旅行記 赤い大地への旅/雨と貫かれた雲」。岡山県出身の文谷有佳里さんの有機的なモチーフと記号的なモチーフの重なりによるリズムとハーモニーを表現した作品「なにもない風景を眺める 2023.8.8」。岡山県出身の三宅佑紀さんのトレーシングペーパーにパステルで個人の記憶を表現した作品「ミルラの布 #02」。岡山県出身・在住の横山瑞歩さんのベッドに座る女性と古代から生きる魚ピラルクの組み合わせで時間の流れによるやるせなさを表現した作品「彼方」。
岡山県立美術館学芸員の古川文子さんは「今年は絵画が多いが、どの作品も表現手法やテーマが違い見応えがある。これから活躍を期待される若手アーティストばかり。自分なりのI氏賞選考を行う楽しみもあり、自分のお気に入りを見つけることもできる。ここから長い期間、アーティストを追い続けて応援できることも楽しみ」と話す。
会場では、応援メッセージを記載して入れるボックスを用意する。書かれたメッセージは、直接アーティストに渡される。
2月に大賞1人と奨励賞2人を発表。3月にはルネスホールで贈呈式を行う。3~4年後に大賞受賞者の展覧会を岡山県立美術館で開く予定。大賞には300万円、奨励賞には100万円の副賞を贈る。
開催時間は9時~17時(最終日は16時まで)。今月28日まで。