10月22日、岡山県立矢掛高校で、なかよし学園プロジェクトが「世界とつながる学びプロジェクト」講演会を実施しました。同校はユネスコスクール認定校で、地域探究「やかげ学」など地域に根差した学びが盛んです。今回は、アフリカ・中東・アジアを中心とする世界の課題を取り上げ、ニュースを自分ごと化し、“同じを見つける”平和づくりの技法とともに、地域探究から国際協働(実装)へつなぐ学びを提案しました。

災害や戦争などエージェンシー(当事者意識)の育成を行うプログラムを実施
当日の内容と反応
講演は、現地映像や対話を交えながら「平和って何?どうやって作る?」を全員で考える構成です。対立をほどく実践として「同じを見つける(Find the Same)」を紹介し、「平和は誰でも作れる」という行動原則を提示しました。生徒からは「世界は広いけれど意外と近い」「同じを見つけることが大事」「自分にもできることがある」などの声が数多く寄せられ、戦争・災害の“遠い話”が教室での対話と実装計画へとつながりました。
また、講演の中でなかよし学園が7月~8月に実施したシリア・プロジェクトを紹介し、“戦後0年”の現実-復興が始まった直後の教育の課題や子どもたちの暮らし-を生徒に伝えました。さらに中村雄一代表はシリア/ネパールの現地パートナーとテレビ電話で接続し、教室と世界の「現場」をリアルタイムでつなぐライブ対話を実施。生徒は直接質問を投げかけ、ニュースで見聞きする出来事が自分たちの学びと地続きであることを体感し、“受け手”から“関わる担い手”へと意識を一段押し上げる機会となりました。

シリア・アレッポのアラさんからシリアの内戦のリアルを学ぶ
最近クーデターで初の女性首相が誕生したネパールのラビンドラさんからリアルなネパールを学ぶ

個人の課題、地域の課題、国際課題は関連性がありやかげ学が世界につながることを学ぶ生徒たち
学校・地域の声
矢掛町地域おこし協力隊/岡山県立矢掛高校コーディネーター 伊藤 博暁 氏
「始めは生徒に緊張感がありましたが、中村さんの“生の言葉”が響き、どんどん話に引き込まれていきました。世界平和という難しいテーマに、生徒が前のめりで意見を交わす姿が印象的でした。戦争が“遠い場所の出来事”から自分に近づいたと感じ始めた生徒もおり、“違い”ではなく“同じ”を探すことから一緒に始めたいと思います。」

矢掛高校では地域の方と共に学ぶ取り組みが盛ん
外国人に日本語を教えるプログラムも実施している
これからさらに大きな「世界」を舞台に矢掛高校生たちの挑戦が始まる
これからの展開:地域探究 × 国際実装(CoRe Loop)
2学期は、各生徒が地域資源を起点にしたプログラムを設計・実施します。なかよし学園は12月から世界各国で現地授業を行い、生徒の成果物を各国の教育支援活動で実装します。さらに手紙・写真・短い動画など現地からの反応を里帰りさせ、つくる→届ける→共創→還るの循環で学びを更新するCoRe Loop(Co-create & Return Loop)を矢掛高校発のモデルとして展開します。

コンゴの難民キャンプで活動するなかよし学園
南スーダンの難民キャンプと壱岐島の小学校を学ぶ
ルワンダの貧困地域と広島市特別支援学校をつなぐ
日本の生徒児童の教材が世界で平和を構築している

7月に訪れたシリア・デリゾール。戦後0年の復興に日本の教育の力を活用する
地方発×ユネスコ校から世界へ――エージェンシーを育てる「CoRe Loop」
なかよし学園は、矢掛高校のように地方からESD(ユネスコスクール)と地域探究を接続する学校こそ、より高い社会的評価を受けるべきだと考えます。エージェンシー学習の観点では、生徒が目的を自ら定義し、関係者を巻き込み、資源を動かし、成果に責任を持つ力が中核ですが、矢掛高校の「やかげ学」はこの要件を現場で具体化しています。地域資源を起点に構想→実装→振り返りへと進むプロセスを、私たちのCoRe Loop(Co-create & Return Loop:つくる→届ける→共創→還る)で国際協働に拡張することで、学びは“自分事化”から社会的価値の創出へと確かに跳躍します。これは「支援される側から支援する側へ」の主語転換を伴う実践であり、成果が手応え(手紙・写真・データ)として還流する点でも、学習者エージェンシーの成長が可視化されます。今後は、矢掛高校モデルをベースに評価ルーブリック(目的設定・協働・社会実装・省察)を整備し、教材キット化・公開授業・自治体連携でスケールさせます。地方発の学びが世界で検証され、再び地域の誇りとして戻る循環こそ、これからの学校のスタンダードになりうる--私たちはその実装と普及を全力で支援します。

早速制服のアップサイクルなどアイデアを出し始めた矢掛高校生。これから地域学習の時代が到来する予感。

テクノロジーを体感する施設が豊富な矢掛高校
矢掛高校にはビオトープが校内にある
ユネスコスクール認定を受けた同校の取り組みが楽しみだ
早速世界とつながるアイデアをデザインする生徒たち
団体概要
団体名:特定非営利活動法人 なかよし学園プロジェクト
所在地:〒270-0021 千葉県松戸市小金原4-14-14
事業:教育支援/平和・防災教育/探究学習設計/海外(アフリカ・中東・アジア)での教育協働
公式サイト:http://www.nakayoshigakuen.net/npo/index.html
お問い合わせ
担当:事務局・広報 中村 里英
TEL:047-704-9844
E-mail:nakayoshigakuen.office@gmail.com