
岡山出身の映画監督・安井祥ニさんの映画「水の中で深呼吸」の上映が9月5日、イオンシネマ岡山(岡山市北区下石井1)で始まる。
同作品は、デンマーク日本映画祭やモントリール日本映画祭で受賞した後、7月25日の新宿シネマカリテを皮切りに、名古屋・京都・大阪・群馬など全国15カ所以上で上映が決まった。岡山では、2023年に安井監督の短編映画「つれづれ」「空っぽのシュークリーム」「スイート」の上映会を同館で開催した経緯があったことから、歴代の支配人からの声で上映が決まった。
同作品は、石川瑠華さんが演じる高校1年生の葵を主人公に、水泳部の男女を描く群像劇。葵は、倉敷市を舞台にした「蔵のある街」の主演・中島瑠菜さん演じる日菜に対して、ドキドキする気持ちを持つようになる。先輩とのリレー対決、幼なじみの男子への複雑な感情、「恋とは何か」「友情とは何か」「自分は何者なのか」を描く。
安井さんは2019年、演劇・俳優・映画監督の専門学校「ENBU(エンブ)ゼミナール」に入学。大学以来の映画製作を再開する。友人から自分自身の性自認や性的指向が定まっていない状態を表す「LGBTQ+」の「Q(クエスチョニング)」であることを告白される。うまく寄り添うことができず後悔した安井さんは、同じ悩みを抱えた人を取材をするようになった。
同作品は、専門学校時代の仲間で脚本家の上原三由樹さんと「青春映画」の企画コンペに出展することにした時、学生時代に水泳部だった上原さんと水泳部を舞台にした「LGBTQ+」をテーマにした脚本を作り始めた。
安井さんは「どこで自分が周りと違うと感じたのか、つらい思いをしたのか、ずっと言えないでいるのか、なぜ言えないのかなど7人に人生のストーリーを聞き、脚本を書いた。『自分たちを悲劇にしてほしくない』『特殊な感情だとされたくない』の声から、それぞれの悩みを抱える高校生4人を描き、悩みを肯定できる映画を作ることにした」と話す。
約3年前の2022年にオーディションを行い、2023年に約2週間の撮影。安井さんが悩んでいる様子を俳優たちがまねをするほど、毎日、頭を抱えて悩んでいたという。「本当の意味での共感はできない。アライになるにはどうしたらいいかをいつも考えていた。話を聞くこと、寄り添うことにした。人には誰にも言えないことがある。話せて良かったと言われ、映画を作ってほしいと言われた。世の中には発せられない声なき声を映画は届けられると信じた」と話す。
「映画を見た人から『救われた』と感想をもらったことでほっと安心した。作って良かったと思えた。初めての長編映画で配給会社がついた。多くの人に見てもらいたいが、高校生が登場する映画なので、高校生にも届けたい。今後は自分の描く未来について考えていきたい。平和な日常を望むだけ。優しい気持ちになってほしい」とも。
6日14時30分~の回では、上映後に舞台あいさつを行う。安井監督と主演の石川さんが登壇する。