岡山出身の映画監督・湯浅典子さんが現在、映画「Performing KAORU’s Funeral(直訳=カオルの葬式)」の製作資金やファン、サポーターを募集している。
湯浅さんは大学卒業後、テレビや映画などの映像製作会社に就職し、2005(平成17)年に初めてテレビドラマの監督を務める。2013(平成25)年にフリーランスとなり、これまで短編映画4本、長編映画1本を製作。初めての短編映画「あの、ヒマワリを探しに」で福岡インディペンデント映画祭の40分部門でグランプリ受賞。「空っぽの渦」では、ダラスアジアン映画祭など国内外17の映画祭で受賞した。原作コミックを映画化した「宇田川町で待っててよ。」では、初の長編商業映画監督作品として、全国の映画館で上映した。
同作は、2020年の東京映画祭・映画見本市で、世界32カ国・250本の映画から選ばれた20本のうちの1本。選ばれた映画製作グループは、世界30カ国の映画製作会社、配給会社などとオンラインで結び、国際共同製作の機会を与えられる。
2017(平成29)年のアマゾン・オリジナル連続ドラマ「日本をゆっくり走ってみたよ~あの娘のために日本一周~」は、企画から6年、製作期間1年半の時間をかけた。長期間を費やした作品が終った湯浅さんに、2018(平成30)年4月から6月にかけて友人知人との死別が続いたという。
湯浅さんは「4月には、葬儀をしないでほしいと遺言で告げた大学の同級生との別れがあった。5月には、会社を辞めて1週間後に亡くなった当時の先輩の葬儀があった。社葬で執り行われた葬儀には、人間関係のぎくしゃくした雰囲気に心が痛んだ。6月には、前日まで話をしていた親友との別れが突然訪れた。やりたいことが見つかったと話していた親友の死、生きたいと願う人を殺してしまう現実に、訳が分からなくなった。映画では、一般的な葬儀のこと、死や生についてではなく、私が感じたものを作品にしたい」と話す。
2019(平成31)年春の韓国・蔚山(ウルサン)国際映画祭で出会ったシモエダミカさんが、共同プロデューサーを務める。映画「空っぽの渦」の脚本家・西貴人さん、映画「翔んで埼玉」「コンフィデンスマンJP」などの編集を手掛ける河村信二さん、映画「ゴジラ対ビオランテ」などの美術を担当した遠藤雄一郎さん、映画「カメラを止めるな!」のメークを施した平林純子さんなどが日本人スタッフとして決まっている。
この他、シモエダミカさんが韓国・プチョン国際映画祭で出会った撮影監督、VICTOR CATALÀさんと、音楽監督、JOAN VILÀのスペインチームも加わった。
湯浅さんは2020年11月、地元の岡山に戻り、映画撮影のために岡山県内のローケーションを探し、広報と協力のお願いで300人以上の企業経営者・寺の住職などに会ったという。ロケ地は、蒜山(ひるぜん)高原、真庭市、瀬戸内の島など撮影の70%を岡山県内で行う。「岡山で会う人から、人との距離感や温度感を改めて感じ、脚本に反映させている。東京では書けなかったシーンや表現が毎日のように生まれてくる」とも。
3月13日から、クラウドファンディングで撮影資金の一部を募集している。湯浅さんは「映画をとにかく多くの人に見てほしい。国内だけでなく国外でも見られるために、スペインチームにも加わってもらった。撮影には家を建てるほどの資金が必要。金銭的な応援だけでなく、岡山から世界へ映画を届ける仲間になってほしい」と呼び掛ける。
クラウドファンディングのリターンには、出演者のオーディションに参加できる権利やクリエーティブミーティングに参加できる権利、まだ決まっていない映画の邦題決定ミーティングに参加できる権利、ポスタービジュアルの審査員になる権利、1日アシスタントができる権利、映画のエンドロールにサポータークレジットやアソシエイトプロデューサーとしてクレジットされる権利など、1,500円~850万円のメニューを用意している。
4月から6月にかけて出演者のオーディションを行い、7月から8月に撮影し、2022年春に完成を予定している。クラウドファンディングは5月1日まで。