「空飛ぶクルマEH(イーハン)216」の人を乗せた試験飛行が2月22日・23日、笠岡ふれあい空港(笠岡市)で行われた。主催は一般社団法人「MASC(マスク)」(倉敷市)。
「空飛ぶクルマEH(イーハン)216」の車内(MASC提供)
MASCは2020年7月に同機体を導入し、2021年6月、日本初となる無人試験飛行を同空港で行った。福島県浪江町、広島県福山市、大分県大分市、兵庫県尼崎市、香川県坂出市など6都市で7回の無人飛行を行い、今月17日に大分市で国土交通省の許可を受けた屋外での有人試験飛行を初めて行った。
MASCは2017(平成29)年、任意団体として設立。倉敷には1941(昭和16)年から航空機製作所があったことから、水島コンビナートに関わるものづくり企業の技術を航空・宇宙に生かし次世代産業の創出することを目指し、理事長で瀬戸内エンジニアリング会長の桐野宏司さんら3人で立ち上げた。今回、機体の下には路面を傷つけないために「丸五ゴム工業」(倉敷市)のゴム製マットを使う。瀬戸内海にある727島のうち108の有人島を空飛ぶクルマを活用し、観光、物流、空飛ぶタクシーなどを目指すだけでなく、大阪・関西万博での運航を目指す。
今回の試験飛行では、桐野理事長と同団体会員の2人が乗り、30メートルの高度を滑走路に沿って北へ300メートル、南へ200メートルの約1キロを最高時速36キロで、4分33秒のフライトを行った。主に騒音、振動、気圧など乗り心地を検証するのが目的。桐野さんは「2度目のフライトで緊張感も減り、飛び立つ瞬間には振動があるが、笠岡の山々や田畑を上から眺め楽しめる快適な時間だった」と振り返る。
機体は最高300メートルまで上昇でき、最高速度は約130キロ、1度の充電で25分・約30キロの航行が可能だという。大阪万博へ向けて、観光・遊覧、タクシー、物流、公共交通などさまざまなケースを想定した試験飛行を繰り返す予定。
MASC飛行チームの小池良次さんは「実際に人が乗って商用運航するにはたくさんのハードルがある。住居のないエリアで、空港近くを通らず、通信電波の良好な場所を飛行経路に選び、地点間の試験飛行の必要がある。特に海上運航の場合は、気流の乱れや墜落した際の安全対策などが最も大切。今回の機体は試験用の機体だが、今後は商用機体を使った試験も必要。大阪・関西万博以降には一般の人が乗れる世界を目指す」と話す。
23日には、関西(かんぜい)高校(岡山市北区西崎本町)の津田賢太郎副校長などもフライトを体験した。