備中松山城(高梁市)の「城主」に猫の「さんじゅーろー」が正式に就任して約1カ月がたった。
同城は、倉敷市の北側・高梁市に位置し、臥牛山(がぎゅうざん)の山頂・標高約430メートルにある日本で唯一の現存する天守の残る山城。天守、二重櫓(やぐら)、土塀は国の重要文化財に指定されている。
「さんじゅーろー」は推定3歳、雄の茶トラ猫で、名前は備中松山藩出身の新撰組隊士・谷三十郎にちなんでいる。昨年7月1日に動物愛護団体から高梁市に住む難波恵さんのもとに。当時は「なつめくん」と呼ばれていた。
「城主」になるきっかけとなったのが、平成30年7月豪雨。豪雨の影響を受けた同市では、浸水や断水、鉄道の復旧の遅れもあり、難波さんの家は無事だったが「さんじゅーろー」はベランダから逃げ出し、約6キロ離れた同城で発見された。
痩せてしまっていた「さんじゅーろー」に管理人が食べ物をあげている間、誰ともなく「城主」と呼ぶようになったという。当時はまだ城に住み着いている猫という存在だったが、観光客にも愛嬌(あいきょう)を振りまく様子から、難波さんは観光協会に譲ることにした。7月の来場者は、前年比20%まで落ち込んでいたが、口コミで少しずつ回復し10月には前年を上回ったという。
11月4日には再び騒動も起きた。観光協会事務局長が翌日の取材のために「さんじゅーろー」を自宅へ連れて帰っていた際、「さんじゅーろー」が失踪。市内のごみ収集所、コンビニ、銀行、市役所など約200枚のチラシを掲示して捜索にあたり、19日後の23日、近所の裏庭にいるところを1キロ以上痩せた状態で見つかった。
同観光協会は「さんじゅーろープロジェクト会議」を開き、「城内の建物に住む」「10時と14時の城内見回りをする」「観光客から食べ物をなるべくもらわない」の御法度を決め、12月16日に正式に城主として入城した。
同協会の大樫文子さんは「これまでは城好き・歴史好きに愛されてきた。猫好きの人にもさんじゅーろーをきっかけに同城、高梁、雲海などの絶景、谷三十郎に興味を持ってもらいたい」と話す。
現在、「さんじゅーろー」のフェイスブック友達は2000人を超える。今後もSNSでの発信を続け、LINEスタンプの制作も検討しているという。