岡山県出身の中村智道さんが写真作品「蟻のような」で11月8日、キヤノン主催の「写真新世紀2019」でグランプリを受賞した。
今年で第42回の公募となった「写真新世紀」は、新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした文化支援プロジェクトとして1991(平成3)年にスタートした。1959人の応募から優秀受賞者7人を選び、同日7分間ずつのプレゼンテーションを行い、グランプリを選んだ。
優秀受賞者は、ポール・グラハムさんの選出した江口那津子さん、安村崇さん選出の遠藤祐輔さん、瀧本幹也さん選出の幸田大地さん、サンドラ・フィリップスさん選出の小林寿さん、ユーリン・リーさん選出の田島顯さん、リネケ・ダイクストラさん選出の中村智道さん、椹木野衣さん選出の吉田多麻希さんの7人。
中村さんはこれまで絵画、映像作品で数々の賞を受けてきたが、写真作品は初出品初受賞という。大小16枚の写真で構成し、テーマは「死」。大群のアリで人の形を表現した作品や、接写した2匹のアリの写真、幼少期の中村さんや中村さんの父の写真も並ぶ。
2017(平成29)年、岡山県赤磐市出身の詩人永瀬清子の生家横にある壊すことが決定した蔵を使った映像監督を行った。音楽監督に坂本弘道さん、朗読を二階堂和美さんが参加した。ハードな撮影の中、自らの体調も崩し、同時に訪れた父の闘病・死が今回の作品制作へと向かわせたという。
中村さんは「自分が自分の身体を通して感じていたこと、見えていることを表現するだけ。方法や技術は、その時できるものを使うだけ。制作は2018年の春と秋、1日数時間だけ体調の良い時だけ制作することができた。人生体験に勝るものはない。仮想体験が簡単にできるようになった世の中では、深く分かり合えるコミュニケーションがしづらくなっている。多くの人に伝わるとは思っていない。私は私が生きるペースで表現を残していくだけ」と話す。