
第40回「坪田譲治文学賞」の授賞式が3月8日、西川アイプラザ(岡山市北区幸町)で行われた。
同賞は、岡山市出身の小説家・児童文学作家の坪田譲治の功績にちなみ、1985(昭和60)年から開催。今回は、作家の五木寛之さんや阿川佐和子さん、中脇初枝さんら7人の選考委員が最終選考に残った5作品から絵本作家の堀川理万子さんの「ひみつだけど、話します」を選んだ。
堀川さんは東京都出身。東京芸術大学卒業後、画家として活動しながら、月刊誌「こどもの本」の表紙絵を描いたことをきっかけにスウェーデンのウルフ・スタルクさんの絵本「シロクマたちのダンス」の挿絵を担当する。小手毬(こでまり)るいさんの「空と海のであう場所」の表紙絵や「今昔物語絵本シーリズ」などを手がけるほか、絵だけでなく物語を創作して発表するようになる。「海のアトリエ」では、第53回講談社絵本賞など3賞を受賞した。
同作は、電車好きの足立くん、生き物に詳しいうっちゃんなど小学3年生が登場し、それぞれの秘密を介して心がつながっていく様子を描く。編集プロダクション「らいおんbooks」の企画で、初めのシーンは踏切で始まる、公園に蛇がいるなどの共通の設定を設け、3人の作家が執筆。昨年は、第2弾としておくはらゆめさんの「ふみきりペンギン」が出版された。
堀川さんは「電車通学をしていた小学生時代の体験や当時の同級生に会って、ストーリーを組み立てた。頭の中では、全ての物事を文字ではなく図像で思い描く。本の中では、文字と絵が混然一体となって展開する。あえてモノクロの絵にしたのは、読む人それぞれの色を加えて読んでもらえればという思いから」と話す。
「秘密にしておきたいことは、話してしまったら大事なことではなくなってしまう。企画をもらった時はコロナ禍で、個でも生きられるけど、誰かと関わることで見えてくる景色が楽しくなることも強く感じた時期だった。タイトルに読点を入れたのは、子どもが一歩踏み出す時の一瞬の間、決意のようなものを表現した。子どもの日常の中にあるファンタジー、どこにでもあるが、それぞれに感じる子どものかけがえなさを再確認してほしい」とも。