
天プラ・セレクションVol.107「今田千裕展~脈うつ層~」が3月25日、天神山文化プラザ(岡山市北区天神町)で始まった。
天プラ・セレクションVol.107「今田千裕展~脈うつ層~」の会場
天プラ・セレクションは、岡山県ゆかりの作家を対象とした岡山県天神山文化プラザが主催の企画展。今回は一般公募の中から、本年度の選考委員である岡山県立美術館の福冨幸さんと彫刻家の北川太郎さんが選考する「クロス部門」。
今田さんは岡山県倉敷市生まれ。総社南高校・美術工芸系を卒業後に、倉敷市立短大、岡山県立大学大学院でテキスタイルを専攻した。シルクに溶かしたろうで模様を描き、その他の部分に膠(にかわ)に岩絵具を混ぜて作った色を入れていく。絵画的な表現とシルクの風合いなど表現の広がりがあることから、作品を作るようになったという。
作品は、3年くらい前から始めた立体的な作品が中心。球体に形作られた中に脈打つ血液のような模様が見える作品「皮膚」。赤、青、オレンジ、紫など10種の「皮膚」を展示。今田さんは「体の内側を表現している。臓器には『器』という言葉が使われていることから、球体にした」と話す。
天井からつられた作品「再生」は、縦5メートルの帯状シルクを横に3枚、縦に4枚を重なるように配置。「記憶の情景は奥に行くほど薄れていき、和らいでいくようでもある。裏側から見えれば、記憶を思い出す過程のようでもある」と話す。
「繰り返し脈打つ」を意味する作品「Pulsating Repeat」は、複製をたくさん作れる技法のシルクスクリーンを使い、基本の模様を同じにした3枚のシルクに、ろう染めの岩絵具で色の濃淡などで表情を変化させた作品。
高い場所からつり下げられた作品「脳裏に浮かぶ」は、人が何かを思い出す過程を表現。上を見つめ、徐々に姿が完成していく様子をドレスの形状で表現した。
今田さんは「人は記憶することを、『脳裏に焼き付ける』『胸に刻む』のような表現する。体に傷を負った時、体内の赤色をのぞかせる。赤色は強い記憶を印象付ける色。細かい表現や色合い、素材感などを実際に見てほしい」と話す。
開催時間は9時30分~17時。観覧無料。今月30日まで。