岡山市北区表町かいわいのバーやカフェに、「流しのCD屋」ことmoderado music(モデラード・ミュージック)の岡本方和(まさかず)さんが夜な夜な現れマニアックな音楽ファンを喜ばせている。
岡山の老舗CD・レコードショップ「グリーンハウス(本社・倉敷市)」が経営する店舗の一つで、ワールドミュージックやジャズ部門の店「Disc Trans(ディスクトランス)」のバイヤーだった岡本さん。数年前に「Disc Trans」が閉店したのをきっかけに、岡本さんが選ぶ音楽のファンだった客や知人の経営する店を回る「流し」で売るようになった。
客として店を訪れ、カウンターの端に座ってコーヒーを注文し、話題が出ればかばんからCDを取り出し紹介するというスタイルで営業している。岡本さんは「流しなので押し売りはしない。店がCDを買ってくれてBGMとして流していることも多いので、来ていたお客さんから『この曲は何?』と聞かれて出すような感じ」と話す。なじみ客から「幸せの赤いかばん」とも呼ばれるかばんの中にはいつも50~60枚のCDを持ち歩いており、MP3レコーダーに入れたCD音源をその場で視聴できるようにしている。
扱うジャンルは、アルゼンチンやブラジルなど南米を中心に、アコースティックのアンサンブルから最前衛の電子音楽まで。穏やかな印象のものから、エッジの効いた音楽など、独特の切り口のものを選んでいるという。岡本さんは「最近は店でCDを買うことが減りネットを通じてダウンロードするのが定着してきたが、それだと欲しい物は手に入るが、思いがけない音と出合う機会は減る。店員との対話の中に新しい音楽と出合うきっかけがあったのに、それが無くなってしまうのが残念」と語る。
岡本さんはほかにも音楽イベントの企画や海外ミュージシャンのライブツアーで岡山公演も担当もしており、6月9日に行われる「ギジェルモ・ソリット・ジャパンツアー」では物販ブースでCDの販売も行う。翌10日には北区天神町のバー「Lyoba(リョバ)」で、同ツアー招聘(しょうへい)元である音楽レーベルディレクターと、岡本さんとのトークイベントを開催。扱う音楽の紹介やミュージシャンの裏話なども披露する予定。
流しとしての営業は主に表町かいわいや岡山近郊を中心に回っているが、知人に呼ばれ、広島や鳥取、長野、東京へも赴くことがあるという。ほぼ毎週日曜はカフェバー「サウダージな夜」(北区天神町)で「日曜流し」として21時ごろから出没している。
出張依頼などはメール(moderadomusic@gmail.com)で受け付ける。