日乃出醤油・小泉醸造元(岡山市東区金田)の蔵を地域で使えるイベントスペースに改修して、3カ月がたった。
日乃出醤油は、1878(明治11)年に創業した。以前はしょうゆ造りをしていた蔵は、約40年使われていなかった。社長の小泉真さんは「戦後すぐには、たくさんあったしょうゆ蔵は、現在10軒以下になった。地域の人に愛してもらったしょうゆ店なので、地域のために使える場所を作ることにした」と話す。
屋根や内部の壁など傷んでしまった部分を直し、3棟のうち2棟は、マルシェやステージイベント、展覧会などが開ける空間とした。1棟は透明のアクリルで仕切り、しょうゆだる39個を展示する。以前は120個あったというたるは、高さ約2メートル、直径1.8メートルの大きさで、1500リットル以上のしょうゆが入るという。
金田地区は、夏目漱石にゆかりの場所がある。東京帝国大学の学生だった夏目漱石は、1892(明治25)年に約1カ月、岡山に滞在している。岡山市内にあった亡き兄の妻・小勝の実家へ訪れ、3泊4日で小勝の再婚先のある金田地区に訪れたという。蔵が面する通りは、夏目漱石が滞在時に行き来した道として「金田村・漱石ロード」と名付けられている。
小泉醤油では、夏目漱石も食べたと言われる卵かけご飯用のしょうゆ「吾輩のたまごかけごはんしょうゆ」やアイスクリームにかけて食べる「和風メープルシロップ」などの商品も販売している。
10月18日は、蔵を使って第4回「漱石フォーラム」を予定している。小泉さんは、2016(平成28)年から「漱石フォーラム」を企画し、蔵を使っての開催は初めて。
岡山商科大学(北区津島京町2)の名誉教授・越智悦子さんによる基調講演「夏目漱石の金銭感覚」、岡山学芸館高校(東区西大寺上1)のダンス部、合唱部のステージを予定している。「漱石マルシェ屋台」では、西大寺高校(東区西大寺上2)の商業科が昨年地元のイチゴとしょうゆで作った「いちごーゆ」を販売するほか、カフェ&バー「douze(ドゥーズ)」(東区可知1)・古民家カフェ「コメスタィ」(東区九幡)・焼き菓子「ハルトアオ」が出店する。