一人親家庭などの生活困窮者に個人や企業が寄付した食料品や日用品を提供する仕組み「コミュニティフリッジ」が11月2日、「2021年度グッドデザイン賞ベスト100」に選ばれた。
北長瀬コミュニティフリッジは、昨年11月から商業施設「ブランチ岡山北長瀬」(岡山市北区北長瀬表町2)内の倉庫を使って、「北長瀬エリアマネジメント」(同)がスタートさせた。北長瀬コミュニティフリッジは、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で困窮する一人親家庭などの世帯に個人や企業が寄付した食料品や日用品を提供する場所として開設。現在は、700者以上から寄付を受け、提供を受ける世帯の登録数は400世帯以上。毎日約60世帯が利用している。
「コミュニティフリッジ」が受賞したカテゴリーは「日本仕事百貨」を運営するナカムラケンタさんらが審査委員を勤める「一般・公共向けの取り組み・活動」。受賞に当たっての審査委員のコメントでは、人目を気にせず支援を受けられることや誰も無理しないようにICTで無人化していること、提供するものを小分けにしていて平等性やフードロスを防ぐ取り組みにもなっていることなど管理体制が評価された。システムなどをパッケージ化してノウハウ移転を進めているところも同じく評価されている。
北長瀬エリアマネジメントの石原達也さんは「福祉業界では、提供者が無理をすることで継続が難しくなることが多い。無人化で人と人のコミュニケーションの少なさを心配する声もあるが、継続する仕組みづくりを評価してもらえてうれしい」と話す。
北長瀬コミュニティフリッジ内には、寄付をした人、寄付を受け取った人がコメントを書いた付箋を貼ることができるコミュニケーションボードを設置している。石原さんは「主食となる米の寄付では、子どもにお腹いっぱい食べてほしいと願う親から感謝が寄せられた。日常の食事では、栄養バランスを考える余裕がないという声もあり、野菜の寄付にも喜びの声があった。誕生日やクリスマスなどには、普段は多く買えない菓子やジュースなどを喜ぶ子どもたちの声があった」とも。
現在、大阪府寝屋川市と山口県防府市で同様の仕組みを使ったコミュニティフリッジがスタートしている。事業ノウハウの移転で今後は、都道府県に1カ所の割合で同様の仕組みを展開していく予定という。