文化人類学者・松村圭一郎さんの出版記念イベント「岡山から『水俣』を考えること」が2月18日、「スロウな本屋」(岡山市北区南方2)で開かれる。
松村さんの著書「小さき者たちの」の出版を記念して、ミシマ社(東京都目黒区)が主催する同イベント。これまで「Title(タイトル)」(東京都杉並区)、「惠文社一乗寺店」(京都市左京区)、「本屋と活版印刷所」(熊本県天草市)、「ブックスキューブリック箱崎店」(福岡県箱崎1)の書店で、それぞれゲストとの対談形式で行ってきた。今回が5回目。
松村さんは岡山大学文学部准教授を務め、エチオピアのフィールドワークを元に書いた著書「うしろめたさの人類学」などがある。地元・熊本の水俣、天草、須恵村の人々の生活をひもといて書いた「小さき者たちの」が1月20日に発刊された。
当日は、熊本出身で岡山大学大学院医師薬学総合研究科教授の賴藤貴志さんと対談する。賴藤さんは、「小さき者たちの」で紹介される医師・原田正純さんの弟子で、現在も水俣病研究を続けている。写真家W.ユージン・スミスの写真集「MINAMATA」に寄稿している。
会場の「スロウな本屋」は2015(平成27)年、店主の小倉みゆきさんが選書した新刊書店としてオープンした。松村さんとは、2017(平成29)年に「うしろめたさの人類学」出版トークイベントを開催したことをきっかけに、2018(平成30)年から松村さんと本を読む読書会「寺子屋スータ」を開き、1年目は石牟礼道子の水俣病を題材とした著書「苦海浄土」を読んだ。コロナ禍は全てオンラインイベントとして開催してきた。
同イベントは約3年ぶりに会場で開くイベント。当初、小倉さんはトークイベントの開催を見送り、1月21日に人数を制限して出版記念サイン会を開いた。同店のコンセプト「ゆっくりを楽しむ」を実践しようとするとリアルなつながりを重視したいが、「だからこそ慎重に運営してきた」と小倉さんは言う。今回は、10人までに人数を制限しリアルイベントを開くことになった。
小倉さんは「水俣について社会科の教科書で習った程度で、見て見ぬふりをしてきた。タブー視され、見て見ぬふりをしてきたことはこれまでもたくさんあったはず。コロナ禍での生活の変容や政府の対応など重ね合わせる部分もある。当店は昨年5月、コロナ禍で売り上げが落ち、閉店を考えた時期もあった。救ってくれたのは全国の本や書店を大事に思う人たちだった。私たち小さき者たちが大切にすべきものを見つけるヒントがある」と話す。
開催時間は14時~15時30分。現在、オンライン参加者(2,200円)を受け付けている。