備前焼作家・藤田祥さんの陶展「白備前知新」が現在、「天満屋」(岡山市北区表町2)の美術ギャラリーで開かれている。
和歌山市出身の藤田さんは、1998(平成10)年に備前陶芸センターに入所。橋本和哉さんに師事し2004(平成16)年に独立。2019(平成31)年に森大雅さん、馬場隆志さんと共に「BIZEN gallery Kai」(備前市伊部)を開店する。
備前焼は日本六古窯の一つで、古代の須恵器(すえき)の製法が変化し、鎌倉時代には現在の釉薬(ゆうやく)をかけず絵付けもしない焼き物として作られていた。
18歳で初めて備前市を訪れた藤田さんは、備前市立備前焼ミュージアム(同)で三村陶景の「白備前」に出合う。藤田さんによれば、「白備前」は江戸後期から存在するが、蝋石(ろうせき)が混じった土を偶然掘り出した時に作られたもの。三村さんの作品に感動した藤田さんは、白備前をいつか作ってみたいと憧れていたという。
同展は、初めて白備前だけの展覧会。白備前の原料となるセリサイトは、耐火煉瓦の原料となる蝋石の中に含まれる。備前市は耐火レンガの生産地でもあり、多くの鉱山がある。蝋石は一般には販売されておらず、約1年半前、「土橋鉱山」(三石)で個人向けに販売していることを知り、
白備前の制作に挑戦するようになった。
蝋石のうち、レンガの材料となるパイロフィライトが約9割、セリサイトは約1割。セリサイトは化粧品のファンデーションの材料となる。4代にわたり採掘する土橋鉱山の地下156メートルから掘り出され、希少で純度が高いため、備前の土と比べて価格は10倍ほどする。
作り方は、粉状のセリサイトに水を混ぜ、粘土状にして形作っていく。道具に付いた少しの土やさびで色が変わってしまうほか、粘り気がないため大きなものが作りづらい。ゆがみやすく、収縮率も高いなど扱いが難しい。
作品は、酒器、茶器、花器、茶碗、ぐい飲み、皿、オブジェなど約50点。セリサイト100%で作る白備前は現代的で、色の表情がないため、「造形的な表情と透明性での演出を考えた」という。自然物で美しい白いものから連想し、氷山をイメージした茶わんなどを作った。水しぶきを意味する中国語の「水花」という名のオブジェを制作。ミルククラウンの画像をたくさん見て、造形をまねしたという。このほか、備前の土を20%加えた白備前も制作。当初目指していた古備前のような風合いも出すことができ、大きな作品も作ることができるようになった。
藤田さんは「白の色のバリエーションができることが分かった。白は200種類あるといわれ、今後どんな白ができるかが楽しみ。散った灰が色をつけるゴマという現象も白備前にできることも分かった。たくさんの可能性を感じている」と話す。
「土から作るものを陶器、石から作るものを磁器と呼ぶ。白備前は備前エリアから取れる石から作っているので定義としては磁器になるが、白備前を名乗っている。こんなのは備前焼ではないと怒られるのではないかと予想していたが、受け入れられていて驚いている。使う人は備前焼でも磁器でも呼び名は関係ないかもしれないが、育ててもらった恩と愛情から白備前と名乗ることにした。先駆者のいない白い備前焼は世界的に見ても同じものはなく、歴史上の一点にいる緊張感とこれからの楽しみでワクワクしている」とも。
開催時間は10時~19時30分(最終日は16時まで)。1月30日まで。