一般社団法人「MASC(マスク)」の新たな空飛ぶ車のお披露目を7月3日、岡南飛行場(岡山市南区浦安南町)で行った。
お披露目した機体(オートフライトの無人貨物機「V2000CG」)1
同社は2017(平成29)年に任意団体として設立され、2021年4月に法人化。同年6月には2人乗りの機体、EHang(イーハン)社の「EH216」を国土交通省の許可を得た屋外無人飛行を成功させる。2023年2月に同機体を使って大分市・田ノ浦ビーチで有人飛行を成功させた。
今回お披露目した機体は、ドイツと中国の合弁会社「峰飛航空科技(オートフライト)」の無人貨物機「V2000CG」。横幅15メートル、全長11.5メートル、高さ3.3メートル。上下に上昇・下降するための羽根が10枚と、水平方向に飛行するための後部に設置された羽根が3枚。約350キロまでの荷物を載せることができ、時速162キロで飛ぶことができる。航続飛行距離は、風などの条件によって異なるが、過去最大250キロを記録。
同機体は、PCサプライ製品メーカー「サンワサプライ」(北区田町1)のグループ会社「SAI(サンワエアロスペースインダストリー)」(東京都港区)が約2億円で購入。パイロットは同乗しない機体で、プログラムされた地点から地点まで自動運転(オートパイロット)で運行する。貨物機であるため通常は人を乗せて飛行できないが、デモ用の席を設置してお披露目した。今後は岡南飛行場に格納する。
来年開催される「大阪・関西万博」で乗客を乗せて商用飛行を予定した「スカイドライブ」(愛知県豊田市)は6月、客を乗せないデモフライトに変更すると発表した。坂ノ上博史事務局長は「乗客を乗せてのフライトは、法整備も含めてまだ多くの課題がある。万博が一つのきっかけとなり、可能性が広がってくれることを望んでいる。この機体は、中国では20万回のフライトを終えている。中国では高度1000メートル以下の空域を使った産業を『低空経済』と呼び、観光や遊覧、医療救護、緊急支援、輸送用など、市場規模のさらなる拡大が注目されている」と話す。
日本では、今年5月に香川県が空飛ぶ車の実証実験について補助金事業を公募。同社は同日、大阪府、大阪市、兵庫県が実施する補助金事業に採択された。
同社は、2028年に事業開始を目標にした事業「SCAI28(スカイ28)」を発表。牛窓と小豆島、宇野と直島、鷲羽山の周遊などのルート「空のコリドー」の開発を進めた観光や遊覧事業、人口減少や高齢化問題を前提とした訪問医療などの住民サービスなどを検討していく。
坂ノ上事務局長は「新しい機体での試験飛行を年内にはスタートさせたい。同時に空飛ぶ車が離着陸できる着陸場(バーティポート)の設置も、「長大」(東京都中央区)と協力して進めていきたい」とも。