学ぶ・知る

岡山・坪田譲治文学賞に「ユニコーンレターストーリー」 往復書簡絵小説

「取材を受けるユニコーン」を持つイラストレーターの北澤平祐さん

「取材を受けるユニコーン」を持つイラストレーターの北澤平祐さん

 「第41回坪田譲治文学賞・贈呈式」が2月28日、西川アイプラザ(岡山市北区幸町)で行われた。

第41回坪田譲治文学賞を受賞した北澤平祐さんの「ユニコーンレターストーリー」

[広告]

 同賞は、岡山市出身の児童文学作家で、名誉市民の坪田譲治の功績にちなみ、大人も子どもも共有できる世界を描いた優れた作品を1985(昭和60)年から表彰してきた。予備選考会を通過した作品5点の中から、選考委員の五木寛之さん、西本鶏介さん、森詠さん、川村湊さん、阿川佐和子さん、中脇初枝さん、森絵都さんの7人による決選投票の結果、北澤平祐さんの「ユニコーンレターストーリー」が選ばれた。

 北澤さんは子どもの頃から16年間のアメリカでの生活経験があり、洋菓子「フランセ」のパッケージや多くの書籍の装画を手がけるイラストレーター。連載を経て作られた書籍「ぼくとねこのすれちがい日記」でイラストと文章の小説を書き上げる。

 同作品は、3月3日に同じ場所で生まれたハルカとミチオが、ミチオが10歳からアメリカへ引っ越したことから始まる。1990年代、2000年代を舞台に部活やバンド活動、将来への不安、友人や家族などの人間関係などを2人の文通という形で、イラストと手紙でつづる青春小説。

 当日、選考委員の森さんは「選考委員会では白熱の議論があった。左開きで横書きのイラストと手紙の半々という書簡体小説の新しい形を提示してくれた。遠く離れている2人だからこそ、真っすぐに伝える誠実さと、手紙では書けない現実をイラストに隠されているなど、心のキャッチボールが魅力。中盤から2人はどうなっていくのかが気になるところだが、関係性だけに集約することなく、それぞれの無限の可能性を感じさせてもらえる、未来に向けて解放される感覚があった」と話す。

 同作品は、2人のそれぞれのストーリーや構成をパズルのように組み立てるのに約2年をかけ、原稿は最終稿を約3倍の量を書いたという。落ち込んでいるハルカと調子に乗っているミチオをどこでクロスさせるか、学校の始まる4月と9月、テロなどの時事をどう盛り込むかなど、細かい打ち合わせを重ねた後、約半年をかけてイラストを仕上げていった。

 北澤さんは「イラストと文章を半々の往復書簡絵小説を、文学作品として認めてもらえたことはとてもうれしい。アメリカでの生活は舞台装置として詰め込んだが、2人の性格など多くの部分は創作した物語。漫画家・あだち充さんが描く漫画にある幼なじみ設定を使い、最後どうなっていくのかは、私自身も分からないまま書いていった」と振り返る。

 「最近は、カセットテープやレコードなどエモいと言われるので、子どもも大人も、文通の良さも再発見してもらい、一通でもいいので友人に書いてみてほしい。次は読者が選択して読み進めるゲームブックを作ってみたい」とも。

 このほか、坪田譲治文学賞創設40周年記念作品集「心の遠きところ~初めての坪田譲治~」を編集したノートルダム清心女子大学の山根智子教授が紹介した後、芳泉高校の美術部と放送文化部が制作した坪田譲治の生い立ちを描いたデジタル紙芝居を上映した。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース