天台宗・常住寺(岡山市中区門田文化町2)に三千佛堂が完成して2カ月が過ぎる。
岡山藩主池田家祈とう所として岡山城下あった同寺は1919(大正8)年2月22日に移築された。現在は、岡山市内の東に位置する東山、岡山国際ホテル近くにある。移築100年記念事業として進められた。
同寺の住職を務めていた葉上照澄(はがみしょうちょう)・延暦寺大阿闍梨(だいあじゃり)は、宗教宗派関係なく、世界平和を祈る「比叡山宗教サミット」の開催に尽力した。葉上大阿闍梨が亡くなった1989(平成元)年からは住職がいない状態で荒廃していた。2015年に代務者になった本性院(倉敷市玉島黒崎)の永宗幸信住職が同寺の復興プロジェクトとして動き始めた。
2016(平成28)年に始まった比叡山延暦寺根本中堂の大改修により、中庭にあった3本のモミジを伐採することになった。この木を譲り受け、以前より親交のあった「叩き彫(たたきぼり)」昭雲工房(岡山県奈義町)の山田尚公さん・直禾さんに3000体の仏像を霊木の守り分身仏として制作を依頼した。
叩き彫の木端仏(こっぱ仏)は、ノミと金づちだけで作られ荒削りだが、一つ一つ顔も姿勢も違う。父・尚公さんの作品は顔が丸く穏やか、子・直禾さんの作品はスマートで優しい表情をしている。材料となった樹木は、モミジのほかにも2018年9月の台風で倒れた京都の寺院のヒノキ、岡山県内・京都府内の約15の寺院から譲り受けたスギやサクラ。2018年5月から約8カ月間で作り上げたという。
平屋造りの内部は1辺約6メートル、高さ約3メートルの壁面に約30センチの「叩き彫」が並べられている。向かって左面に1000体と釈迦如来、正面に1000体と薬師如来、右面に1000体と阿弥陀如来が祭られている。順に過去・現在・未来を表しているという。1口2万円の志納をすると仏の足下にネームプレートが設置することができる。建設地にはかつて3つの堂があった。同建物内には3000仏のほか、観音堂の観音菩薩、荼枳尼(だきに)天堂のキツネ、山王堂のサルも最上段に祭られている。
永宗さんは「岡山にゆかりもあり、素晴らしい場所にある。檀家がなく多くの人で支えていなくてはならない。写真を自由に撮ることができ、照明の加減によって表情を変えることできる」と話す。「式典でカトリックの神父による聖歌があったように、大阿闍梨の思いを継承し、多くの人の力で復興していきたい」とも。
開館は毎月6日。12時~17時。