岡山大学地域総合研究センター(岡山市北区津島中1)が運営する「西川アゴラ」(岡山市北区田町)が2月18日、閉所した。
訪れた人の寄せ書きを残す「西川アゴラ」の開設時に作ったテーブル
同センターは、2011(平成23)年に産官学民が協働で地域課題の解決を目指してスタートした。2014(平成26)年10月、学生だけでなく、市民団体、NPO、行政が利用できる「西川アゴラ」を開設した。
同所は、西川緑道公園の目の前に位置し、満月の夜に西川緑道公園を使って開催される「満月BAR」、西川緑道公園歩行者天国「ホコテン」など拠点としても活用された。年間約2000人が利用する施設となっていた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年の活動が制限されたことから閉所を決めたという。
前田芳男教授は「街中に大学のサテライト・キャンパスを作ることは多いが、大学関係者ではない人が利用できたことは意義深い。開設時に作ったテーブルには訪れた人の寄せ書きを残している。閉所するがここに蓄積された活動の歴史を残してほしい」と話す。
同所には、全米で最も住みたい街として有名になったポートランドから、多くの講師が訪れた。ポートランド州立大学のスティーブン・ジョンソン特任教授とイーサン・セルツァー教授、ポートランド・シティリペアの代表・マーク・レイクマンさんとマット・ビボウさん、ポートランド出身で1年間岡山大学客員研究員として1年滞在したサウミャ・キニさんなど。岩渕泰准教授は「岡山とポートランドでは、制度や仕組みは異なるが、双方でまちづくりの意見交換ができたことは貴重な体験となった」と振り返る。
岩渕准教授は、2012(平成24)年から岡山市と連携して西川界隈のまちづくりを調査し始めた。2019(平成31)年4月に、西川緑道公園を設計した伊藤邦衛さんや町内会長など30人以上のインタビューを行ったほか、チーム25などの活動・資料整理などをまとめた書籍「西川アーカイブス」を出版した。
岩渕准教授は「西川緑道公園の活用を議論することで、中心市街地の賑わいと回遊性の重要性がよく理解できた。県庁通り1車線化にも影響した。大学人として、地域の中にまちづくり拠点があることの大切さも良く分かった。これまで関わってくれた人に感謝している。『アゴラ』は古代ギリシャの民主主義の空間を指している。『アゴラ』の精神を作り直す良い機会であり、蓄積された研究を伝え、街との新しい関わりを作っていく」と話す。