岡山県立大学の畠和宏研究室で建築・都市デザインを学ぶ小林弘樹さんが3月16日、卒業設計を学校以外の地域の人にプレゼンテーションした。
同研究室では、小林さんと河田達希さんが表町商店街の空き店舗を活用する案を卒業設計として制作した。当日は、河田さんは欠席したため畠先生が代わりにプレゼンテーションした。
2013(平成25)年に閉館した「3丁目劇場」を含むエリアの再開発事業の事業協力者「フージャースコーポレーション」(東京都千代田区)の担当者・園原諒(まこと)さんに、昨年11月に実際の空き店舗がどれくらいの数あるのかなどの現状をヒアリングしていた。同社では、再開発の完成予定である2024年から5年前の2019年から担当者が岡山に滞在し、周辺地域の調査と活性化をしていた。
当日は、公益財団法人岡山文化芸術創造・劇場開館準備室の宮嶋泰明さんと江原久美子さん、カフェ&バー「naradewa(ナラデワ)」(岡山市北区表町3)の店主・松田礼平さん、階段の下まちづくり研究室(同)の秦弘司さん、アーティストの樋口真規さんが参加した。
小林さんは「表町商店街物語」と題し、商店街にある空き家・空き店舗を使い分散型宿泊施設を提案する。1階店舗は営業していないが所有者が2階に住んでいるため、賃貸しないなど物件より難易度が大きく異なるため、1棟全てが空室となっている物件に目を付けた。レセプション、客室、風呂のホテルの機能を一つの建物に集約せず、商店街内に分散させる。特に客室ごとに必要となる風呂は設置費用も大きく、新築で銭湯を作ることで今後、1部屋だけ空室という空きビルの1室を客室に変更しやすくする構想を話した。
小林さんは「地域の人の声を聞けてうれしい。表町商店街に学生が関わり、地域の人、観光客、アーティストなど多くの人にとって空き家の活用が良い循環を生む可能性を探りたい」と話す。設計した建物とその周辺の模型を見せながらプレゼンテーションした。参加者からは具体的なオペレーションやどんな風に拡大していくのかなどの質問が寄せられた。同作品は、岡山県建築士事務所協会の第16回優秀卒業作品表彰で優秀賞を受けている。
河田さんの作品は「うつろう風景」と題し、イベント時に使われる椅子やテーブルなどを見せながら片付けておく空き店舗の活用法を提案した。表町商店街でも道路を使ったテラス営業が許可され、仮設的に椅子やテーブルを出し営業している店もある。白いテープに赤い三角コーンを立てただけの通りの風景として課題を感じていたという。木製の3パーツに天板を組み合わせることで簡単に椅子やテーブルとなる仮設装置を提案。また日常に使われない仮設装置は普段は倉庫にあることにも課題を感じ、一つの空き店舗を使って木製3パーツを組み合わせ、天井からつり下がるアートのように展示する。パーツが使われる量によって、店舗内の様相も変わる。
畠先生は「小林さんは大学院に進学が決まっていて、これから新たな研究課題を探していく。地域に関わり、新しい発想と行動力で地域の人と連携していけるとうれしい」と話す。