「親愛なる友フィンセント~動くゴッホ展」が現在、杜の街グレース(岡山市北区下石井2)で開かれている。
映画版「バイオハザード」のコンピュータグラフィックなどを手がけるデジタルアートスタジオ「MDKデジタルピクチャーズ」が制作したデジタルファインアートを中心に展示する同展。これまで、長野県松本市、鹿児島県枕崎市、広島県三次市で開催し、今回が4都市目。
第1会場では、ゴッホの生涯をオランダ時代、パリ時代、アルル時代、サン・レミ、オーヴェール時代の4つに分け解説。生涯38作品あるといわれる肖像画から自画像を含む8点を展示する。このほかゴッホの生涯や、郵便配達人のジョゼフ・ルーランなどの関係者をパネルで紹介する。
第2会場の入り口では、岡山限定のルーランの映像が迎える。高さ4メートル・幅5.6メートルのデジタル作品「星月夜」は、ゴッホが手紙で書いたように雲がうごめきながら動き、星が瞬きながら回転する。同様に手紙に記された詳細を元に作品「アルルの寝室」を立体作品として展示する。
約5分間のシアターでは、ゴッホが弟テオに宛てた手紙からのみでナレーションを作り、ゴッホが画家人生を語る構成。このほか、大きなスクリーンと5枚の液晶画面を使ったヒマワリやアーモンドなどゴッホの花を描いた作品だけを使ったインスタレーションや、ゴーギャンを迎え入れるために描かれた風に揺れている作品「ヒマワリ」のコーナーを設けている。
最後のコーナーでは、ゴッホのカラー作品900点のうち860点を一挙に鑑賞できる約53分のスライドショーを上映する。
多くの作品には、山梨大学大学院教授の井坂健一郎さんが監修した鑑賞ポイントとして解説文を添える。
企画したネオスペース(山梨県甲府市)の樋口光仁社長は「ゴッホは人気画家であるために作品が世界中に散逸している。一堂に見られる機会はないはず。デジタルファインアートでは、ゴッホの特徴でもある筆のタッチに動きを持たせ、ゴッホの世界観を歪めず魅力を伝えることに徹した。手紙の言葉からゴッホの心情に寄り添い、ゴッホ作品の理解を助けるための展示にもした」と話す。
武蔵野美術大学出身で、現在2つの大学で講師も務める樋口さんは「鑑賞のポイント解説を読んでもらい、自由に感じてもらい気軽にアートに触れる機会としたい。特に子どもたちの美術館賞の場としてぜひ、足を運んでもらいたい」と呼びかける。
開催時間は11時~18時。8月25日まで。現在、ゴッホの自画像をラッピングした6種類のラッピングタクシーも運行している。