「大手まんぢゅう」を製造・販売する「大手饅頭伊部屋」(岡山市北区京橋町)が現在、店頭に並ばなかった商品を使ってクラフトビールの製造を始めた。
同店は1837年、江戸時代後期に創業。今年で187周年を迎える。大手まんぢゅうは、北海道産小豆を使ったこし餡(あん)を、こうじから作った甘酒に小麦粉を混ぜた生地で包んだ蒸しまんじゅう。現在は、直営店3店と岡山県内の百貨店、スーパーなどで販売。「おいしさを損なわない」ためにも、当日作った商品だけを店頭で販売し、破棄を減らすため売れ残らないよう生産管理している。今回のクラフトビール製造には、工場で作ったが店頭に並ばなかった商品を使う。
これまでも製造後に破棄していた小豆の皮を使い、天然染料としてエコバッグを作った。無印良品が服を回収して染め直し再販する仕組み「ReMUJI(リムジ)」と協力して、岡山県で回収した服を小豆の染料で染めた淡いピンク色の服を販売を目指し、回収の呼びかけをしている。
同社常務の大岸聡武さんが島根県の「どじょう掬(すく)いまんじゅう」がクラフトビールを作っているのを見つけ、同社でもチャレンジしてみることにしたという。
ビール造りには、大麦から発芽した麦芽を煮て作った麦汁に酵母を入れることで、麦汁の糖分がアルコールに変わる過程がある。今回のクラフトビールは、麦汁の糖分の一部をまんじゅうの糖分に入れ替えて製造する。うまく溶け合うかなど、途中の工程は何度も実験した。今回の試作では、2000リットル、330ミリリットル瓶で約5000本分のクラフトビールを製造する。
製造する宮下酒造(中区西川原)は、1915(大正4)年創業。清酒、焼酎、ビール、発泡酒、ウイスキーなどを製造販売する。1995(平成7)年に地ビール「独歩」を発売。今回のクラフトビールは同社が作るシュバルツ瓶を使う。
同社マーケティング課長で、ソムリエやサケ・ディプロマの資格を持つ狩山太郎さんは「大手まんぢゅうと黒ビールのペアリングは、同じ黒色でもあり、一緒に食べても組み合わせは良かったので、期待できる。1月下旬に製造を始め、3月に出来上がる。厳密には副原料に小豆が入るのでビールではなく発泡酒だが、ビール好きにもまんじゅう好きにも試してもらいたい」と話す。
1月31日まで、5000本をクラウドファンディングサイトで販売。併せて、感想やアンケートを集計するほか、商品名を募集している。
大岸さんは「今回のビール造りは2025年春発売用の試作。まずは5000本を多くの人に飲んでもらい意見をもらいたい。ビールは約3カ月しか賞味期限がない。花見や歓送迎会など人が集まるところで、このビールを試飲してもらいたい。今後も、フードロスについていくつもの方法でチャレンジしていくことで、北海道で小豆を作ってくれる生産者への感謝を伝えたい」と話す。