赤磐市地域おこし協力隊の戸田洋美さんが現在、同市のブドウを使った除菌ウエットシートの開発プロジェクトを進めている。
戸田さんは昨年8月に同市に移住し、活動を始めた。広島県出身で農園を借りて野菜作りをしていたこともある。大阪でIT系企業に勤めながら、週末はマルシェなどに出掛ける生活をしていた。都市部ではSDGsや持続可能な生活に興味のある人も多くいるが、自ら実践するため2019(平成31)年、岡山市の地域おこし協力隊になった。
岡山市では、ブドウ狩りのできる観光農園や食育など学校との連携事業を行ってきた。一次産業を主とした活動から、観光を軸にして六次化事業に展開したいと考え、赤磐市の地域おこし協力隊となった。初めは六次化セミナーなどに参加してブドウの酵母を使ったパンやみそなども考えていたという。
農林水産省の2018(平成30)年の統計では、岡山県のブドウの出荷量は、山梨県・長野県・山形県に次いで4位。桃の出荷量は全国6位。赤磐市はブドウ・桃の産地。糖度が達していない果実や傷付いた果実はジュースやワインの加工品にすることが多く、それでも廃棄される果実は全体の約15%にも及ぶ。
同プロジェクトは、廃棄されるブドウを発酵・蒸留してエタノールを生成し、除菌ウエットティッシュを作る。岩手県奥州市に工場がある、オーガニック米からエタノールを製造販売するファーメンステーション(東京都墨田区)が協力する。奥本農園(赤磐市)で昨年収穫したブドウ「紫苑(しえん)」20キロを冷凍保存していたものを使う。
ブドウの除菌ウエットティッシュは、9月の販売開始を目指している。価格は170円(10枚入り)。戸田さんは「香りなど付けず、99%天然素材で作っている。ブドウの生産者も廃棄することは望んでいないし、活用できることでブドウの産地・赤磐市を知ってもらうチャンスとしたい。今後は桃の除菌ウエットティッシュも予定している」と話す。
エタノールを作った後のブドウは烏骨鶏(うこっけい)の餌として使われている。7月1日まで、活動資金をクラウドファンディングで募集している。