「空飛ぶ車EH(イーハン)216」の試験飛行が12月23日、笠岡ふれあい空港(笠岡市カブト西町)で行われた。主催は「一般社団法人MASC(マスク)」(倉敷市)。
マスクは、2017(平成29)年11月に任意団体として設立。「水島エアロ・スペース・クラスター」の頭文字からマスクと名付けた。現在、40社の企業団体が加盟。空飛ぶ車・ドローン・教育の部会が活動し、調査研究・啓発、事業化への取り組みをしている。
今回のデモフライトは3回目。今年6月4日に同空港で、同機体を使った日本初の試験飛行が行われた。2回目は、12月13日に福島ロボットテストフィールド・浪江滑走路(福島県)。1回目は雨天、2回目は強風の中だったが、今回は快晴の中で行われた。
今回は、前回までと同様に無人飛行ではあったが1人分の重さを想定した60キロの米を載せた。滑走路の上空だけでなく、同空港の周辺のブロッコリー畑の上空も飛行した。NTTドコモLTE回線を使いオートパイロット機能で、高さ30メートルを約5分、距離にして約1キロを飛行した。
マスク事務局長の坂ノ上博史さんは「気象条件や社会条件が違う日本各地で飛行実験することで知見を増やし、地域の人たちへの普及啓発にもなる。空飛ぶ車は防災や減災への活用も重要な用途の一つだと考えているので、東日本大震災のあった浪江町での飛行実験は意義深く感じている。航空法の整備・航空管制のルール化・人材育成の課題を、飛行実験などを通して解決していきたい」と話す。
午後から行われた試験飛行には、関西高校(岡山市北区西崎本町)の特別進学コースの学生20人が見学した。同校は3月にマスクとワークショップ「KANZEIロケット開発プロジェクト」を開くなど交流がある。来年4月には航空・宇宙や未来をキーワードとしたサイエンスフロンティアコースの開設が決まっている。
来年2月にはマスクと倉敷・岡山・笠岡・姫路の商工会議所と瀬戸内商工会で「次世代モビリティ瀬戸内コンソーシアム」を設立する。瀬戸内海にある約700の島のうち、有人離島108島への物流と人の移動を空飛ぶ車を活用し解決することが目的。
マスクではイーハン製「VT-30」を購入し同コンソーシアムで共同利用する予定としている。同機体は、最大飛行時間は100分、飛行距離は約300キロ。笠岡諸島や小豆島への物流などの活用を検討していく。このほか、瀬戸内の島々へ飛行する観光・エアタクシーを2025年「大阪・関西万博」へ提案し実施していく予定。