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建築物の保存・活用を市民と考える 来年閉館の岡山市民会館でシンポジウム

日本建築家協会中国支部岡山地域会会長の中桐愼治さん

日本建築家協会中国支部岡山地域会会長の中桐愼治さん

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 シンポジウム「建築の再生活用を市民と考える」が2月5日、岡山市民会館(岡山市北区丸の内2)で開かれる。主催は日本建築家協会中国支部岡山地域会。

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 開催のきっかけは、同会会員で建築家の平野毅さんが、岡山市民会館を使った実験イベントを検討していたこと。同館は2024年3月に閉館し取り壊しが予定されている中、平野さんが費用負担し利用希望者を募ることで、どれくらいの人が同館を使いたいと考えているのかを探ろうとしていた。

 同会の保存再生委員会メンバーが主体となり、岡山市民会館を設計した佐藤武夫が手がけた「倉敷市児島文化センター」など、岡山県内で1960~70年代に竣工したコンクリート建築の保存・取り壊しの議論を背景に、「使う」市民と考えるシンポジウムを企画した。

 前半は、再生・利活用の事例を笠原一人さんと3人の登壇者が対話型で講演する。1955(昭和30)年に前川國男・坂倉準三・吉村順三の共同設計で完成した「国際文化会館」(東京都港区)の保存・再生を2006(平成18)年に行った鯵坂徹さん、佐藤武夫の設計で1960(昭和35)年に竣工した「防府市公会堂」(山口県防府市)の耐震工事を行った佐藤総合計画の花本猛さん、1958(昭和33)年の建設から、1980(昭和55)年の改修、2014(平成26)年の保存まで3度とも市民の要望で工事が行われた村野藤吾設計の「米子公会堂」(鳥取県米子市)について解説するクルマナオキ建築設計事務所代表の来間直樹さんの3人が登壇する。

 後半は、1922(大正11)年に日本銀行岡山支店として建築された建物を2005(平成17)年に室内楽を中心とした多目的ホールに改修した佐藤正平さんと、JR岡山駅前広場のデザインを担当する岡山理科大学建築学科准教授の弥田俊男さんを加えて、岡山にある「保存を検討すべき建築」について登壇者が対話する。

 シンポジウムの前には、岡山県立大学名誉教授の山田孝延さんと岡山理科大学教授の増田俊哉さんと共に会場の岡山市民会館を見学も予定。

 1964(昭和39)年に竣工した岡山市民会館は建築家の佐藤武夫が設計し、コンサート、成人式、式典や音楽コンクールなどに使われてきた。正八角形の音楽ホールを持ち、1階には吉岡堅二のコンクリートを削り作られた壁画レリーフ「牧神」、ホワイエには岩淵活輝さんが制作した赤・青・黄色などモザイクガラスが埋め込まれた壁がある。岡山創造芸術劇場の今年9月の完成に伴い、閉館が決まったが、昨年6月には優れた近代建築を調査・研究する国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」日本支部が「日本におけるモダン・ムーブメント建築」に選んだ。

 平野さんは「日本では耐久性などを問題に取り壊しになる建築が多い。街の魅力は歴史や時間が何重にも織りなすことで作られる。保存することだけが正しい道ではなく、利活用しても、取り壊しして新築しても、人に使われる建築でなければ意味がない。あらゆる立場の人が、共に考える場としたい」と来場を呼びかける。

 開催時間は13時~16時30分。入場無料。

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